(nna.jp) - ベトナムのソフトウエア開発企業の業界団体ベトナムITアウトソーシング(VNITO)・アライアンスは8月31日、福岡市で、福岡県情報サービス産業協会(FISA)と、両会員企業のビジネスや進出などを支援するための覚書(MOU)を交わした。VNITOは日本からのオフショア開発の受注拡大に向けて、年内に福岡市に日本法人VNITOジャパンを設立する計画だ。
VNITOは「クアンチュン・ソフトウエアシティ(QTSC)」とホーチミン市コンピューター協会(HCA)が中心となり、2016年に設立されたソフトウエア開発企業の団体で、約200社が加盟する。一方、FISAは1989年に設立され、約180社が加盟している。
VNITOはこれまで、東京都、神奈川県、大阪府の団体と覚書を交わしているが、福岡県は今回が初めて。今後、福岡県とベトナムのIT企業の情報交換、ビジネスマッチングの推進が期待される。
VNITOは、年内に福岡市に法人を設立し、FISAから案件を一括して受注し、会員企業に委託する「プロジェクト・ハブ」としての役割を担う。また、発注元の期待に合う品質水準に達しているか、ソフトウエアおよびセキュリティープロセスを厳格に順守しているかなどを監視する「プロジェクト・マネジメント・オフィス(PMO)」としての機能も果たす。PMOチームには、経験豊富な日本人とベトナム人のIT専門家を置く予定だ。
FISAの藤本宏文会長(シティアスコム代表取締役社長)は「単発的なオフショア開発ではなく、恒常的な関係につなげていきたい。今回の覚書がベトナムと福岡のIT分野の懸け橋になることを期待する」と挨拶した。
VNITOのラム・グエン・ハイ・ロン会長(QTSC最高経営責任者)によると、ベトナムのオフショア開発の発注国の中で日本は米国に次いで2番目だが、成長率では最も高く、受注案件の数、受注額とも年25%の割合で伸びているという。ベトナムの強みとして人件費の安さ、勤勉さ、ベトナム政府のIT産業に対する優遇措置などを挙げながら、今後の課題として「日本語ができる技術者はまだ少なく、増やしていく必要がある」と述べた。
ベトナム情報通信省の「ICT白書2017」によると、2016年のベトナムのソフトウエア業界の従業員数は前年比20%増の9万7,000人、デジタルコンテンツ業界は同5%増の4万6,000人。Resorz(リソーズ、東京都目黒区)が運営するオフショア開発依頼のポータルサイト「オフショア開発.com」によると、18年のベトナムのオフショア開発の平均人月単価は26.13万円で、日本の3分の1程度。中国、インド、フィリピンと比べても低い。
覚書調印式の後、筑邦銀行グループのちくぎん地域経済研究所やFISAなどの主催で、来福したVNITO加盟企業16社と、福岡県のIT関連企業の商談会が行われた。ベトナム企業としては、リッケイソフト(ハノイ)や、フジネットシステムズ(ホーチミン市)、サンライズ・ソフトウエア・ソリューションズ(S3:ホーチミン市)など、日本からのオフショア開発の実績が豊富な企業が参加した。